上海万博と中国経済の今後

2010.07.13発行 Vol.130
 この週末を利用して2泊3日で、上海万博に行ってきました。ひとりで行くのは寂しいと思ったので、親しいお客様数人にご一緒していただきました。1日半ほど万博会場にいたのですが、まずその会場で気づいたことからお話しします。

 万博では入場者の大半が中国人でした。ガイドさんに話を聞くと、7千万人を予想している総入場者のうち、外国人は3百万人だけだそうです。私たちが行った日は二日とも50万人弱の入場者数だったのですが、やはり見かける人の大分部分は中国人でした。中国館に入りましたが、名物のコンピュータ制御の絵巻物は予想していたよりずっと巨大で圧倒される大きさと迫力でした。中国の各省の状況などを展示する他のパビリオンでは4D(3Dに観客が風を感じたり、椅子が動く、などがプラスされている)での表現などハイテクを駆使したものも見学できました。

 事前の報道では、中国人来場者のマナーの問題が取り上げられることが多かったのですが、私たちが経験した限りでは割り込みなども少しはあるものの、それ程ひどいといった状況ではなく、ごみのポイ捨てなどにも主催者も来場者もかなり気を遣っていると思いました。ただ、一人っ子政策のせいで、子どもたちを親や祖父母がかなり甘やかせているようで、この子たちが大きくなるとかなりわがままな大人に育つのでは、という懸念を感じました。

 今回の訪問を含めてこの1年半程の間に4回中国を訪れていますが、発展の速さに私たち日本人の感覚がついていっていないことを感じるとともに、この発展スピードがどこで鈍化するのかということをいつも私は思っています。

 まず、日本人の感覚ですが、私たちの発展スピードが落ちて数十年経つため、どうしてもその感覚を通じてモノを見がちです。中国というと80年代前半頃までは、天安門広場の前を大量の自転車に乗る人民服を着た人が往来しているイメージがあり、日本はその頃からあまり発展していないので、現場を見ないといまだにそれが少し発展した程度のイメージを持っている人もいると思います。

 また、中国の発展を感覚的にも心情的にも理解しがたい人も少なくないかもしれません。もちろん、まだ貧しい人たちも特に地方を中心に多くいることは事実ですが、私たち日本が、いま好き嫌いに関わらず真っ向から経済的に相手にしているのは、私たちをすさまじいスピードで抜き去ろうとしている中国なのです。そしてその事実を素直に認識しておく必要があります。

 そして、今後の中国ですが中国政府は輸出を通じて経済をとにかく発展させる政策をとってきましたが、その矛盾が大きくなり過ぎて政策をある程度転換せざるを得ない状況にまできているような気がします。改革開放路線による経済の急速な発展が、他の共産主義国が崩壊する中で中国の政体を維持したのですが、それが今、逆に国内の格差を非常に大きくし、共産主義政権の矛盾を限界近くにまで拡大させ、各地で暴動が頻発しています。

 そのため、政府は工場労働者の賃上げ要求ストなどを容認し始めました。ストを認めてまで賃上げをさせることは、輸出産業にはマイナスになるものの、底辺の労働者の生活の底上げをしないと、政治的に大きな問題に発展するとの認識が高まっていることの裏返しだと思います。

 同様に、人民元の切り上げも輸出産業には打撃となるものの、輸入物価の引き下げを通じて、低所得者層の暮らしへの好影響は期待できます。もちろん、中国は当面輸出主導で経済をけん引していかなければならないでしょうが、低所得者層の所得拡大を通じて内需を拡大していくように舵取りを少しずつ変えつつあるように思えます。うまくそのバランスが取れればよいのですが、いずれにしても万博後の経済運営に注目したいところです。