リーダーの意思決定

2010.05.25発行 Vol.127
 普天間基地の移設問題は、結局、辺野古への移設ということに、鳩山首相は結論を出しました。首相自身は「現行案とは違う」と言っていますが、自民党時代の結論と変わるところはありません。この結論が出るまでの間、沖縄の方たちは、「国外、最低でも県外」という首相の言葉に期待を寄せましたが、いったん抱いた期待は大きく裏切られることとなりました。また、徳之島など、移設候補地となった地域にも、一時的にせよ大きな混乱をもたらしました。そして、辺野古への移設と決めた首相の判断材料が「抑止力」ということですが、このことは従来から分かっていたはずで、北朝鮮や中国に対しての抑止力がここにきて急に必要になったということはなく、「いまさら何を」と思われた方も少なくありません。

 結局、首相の県外移設の考えは、沖縄の負担軽減、普天間基地の危険除去という理念は正しかったものの、防衛問題やこれまでの経緯についての勉強不足や情報の分析不足、さらには、根回しを行うなどの配慮不足などを露呈することとなりました。そして、何よりも、これでまた問題は振り出しにもどりましたが、沖縄県民の感情を大きく損ねたことで、普天間移設もこれまで以上に時間がかかる可能性が高まったということです。これならこの問題を提起しなかったほうがましだったかもしれず、「何だったのか」と言われても仕方のないことです。

 迷走したのは、この問題だけではありません。高速道路無料化の話も、一転、二転した上で、結局は何も変わらないということになっています。この問題では、無償化の是非も大きな議論となりましたが、無償化のためのはずの財源の一部を高速道路建設に回すということにもなってしまいました。「コンクリートから人へ」のはずが、またコンクリートへ逆戻りです。子ども手当も、財源の確保が十分ではなく、今年度は何とか始まったものの、来年度以降はどうなるかは分かりません。これも、今後の成り行き次第では子どもたちの期待を大きく裏切ることにもなりかねません。

 民主党政権は、これまでの自民党の族議員主導による業界団体への利益誘導をやめさせ、また、天下りなどの役人に対する利益誘導もやめさせ、それを直接国民に還元するということを理念としたはずですが、郵政の再国有化などは、自民党時代のやり方にもどりつつあるようにも見えます。その一方で、対GDP比でギリシャの2倍近い財政赤字をわが国は抱えながら、財源のないままばらまきを行おうともしています。もちろん、事業仕分けなどでムダを削減しようとしていますが、財源の確保としては不十分です。事業仕分けは今後も進めてほしいですが、それよりも、マニフェストでうたった公務員の人件費2割削減などのほうが、ずっと効果があるのではないでしょうか。

 もちろん、戦後長期間にわたって続いた自民党政権から新政権に変わったということで混乱があるのは仕方のないことですが、300を超える議席を衆議院で確保しながら、根本的なところを変えられないのは、リーダーシップの欠如によるところが大きいと思います。企業経営者も、恵まれた状況にあっても、勉強不足や思慮、配慮不足が経営をおかしくすることを肝に銘じる必要がありますね。