モンゴル企業訪問と政治

2019.06.11発行 Vol.344
今年もモンゴルの企業に依頼されて、その企業グループの幹部約400名の前で、日本語からモンゴル語への通訳をつけて、6時間ほど(半分は通訳の時間)お話してきました。テーマはリーダーシップなどでした。この企業は、世界3位のカシミア製品の製造販売などを行う会社や銀行、ホテル、レストランなどを持つ企業グループです。今年でウランバートルでの講演は3年目になりますが、私の人生の師匠の故・藤本幸邦老師の「お金を追うな、仕事を追え」という言葉に、この企業の代表者が共鳴されて、私に講演の依頼が来たのがきっかけです。

ウランバートルは、成長する新興国の特徴でもある交通渋滞がますますひどくなっていました。夕方などは、1キロほどの距離を車で移動するのに30分ほどかかることもあります。日本から持ち込まれた中古のプリウスがいたるところに走っており、それらの車が我先に割り込みを行うので、余計に渋滞がひどくなります。
モンゴルの人たちはまじめで勤勉だと私は感じています。今回は2泊3日でウランバートルに行ったのですが、3日目は成田への直行便のフライトが朝7時45分発だったので、5時半過ぎにはホテルを出ましたが、もうその時間から、車がかなり出ていますし、最近できたビルに屋上からロープを下して数人が窓ガラスの清掃を行っているのには驚きました。もちろん、私の講演の受講態度もとても真剣でした。
そうした勤勉な国民性を持つモンゴルなのですが、経済が思ったほどには成長していません。私の通訳をしてくれ、今回も3日間フルアテンドしてくれた30過ぎの幹部と話をしていると、「政治が一つの大きな問題なのです」と話してくれました。

1991年にソビエト連邦の崩壊とともにモンゴルの共産主義も崩壊したわけですが、その後、政権は安定せず、また、腐敗も少なくないということです。民間では、この企業グループのように活力ある企業が増えていますが、それでも政治が十分に機能していないことが経済発展を妨げているのです。渋滞対策も遅れがちですし、日本のODAで建設がほぼ完了している新空港もアクセス道路やシステム運営が十分でなく、開港が数年遅れた状況になっています。
ひるがえって日本を考えれば、日本は政治力はもちろん十分でないところがありますが、それでも、腐敗はそれほどありません。私が若かったころは「ロッキード事件」などの大きな贈収賄事件がいくつかありましたが、このところスキャンダルは数多くあるものの、腐敗と言えるほどの事例は大きく減少しているのではないでしょうか。むしろ、民間の活力がどんどんなくなっていることを懸念しています。
帰りの飛行機の窓から限りなく広がる草原を見ながら、モンゴルの民間の活力と政治の腐敗と日本のそれらを比べて、とても興味深く感じましたし、政治的な腐敗の少ない日本で日本企業も以前のような活力を取り戻して欲しいと経営コンサルタントとして心から思った次第です。

【小宮 一慶】
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