クアラルンプールで感じたこと

2011.09.13発行 Vol.158
 先週末を利用してマレーシアに行ってきました。先週木曜日はKC実践セミナーが東京で行われましたが、翌日の金曜日の午前中に成田を発ち、土日をマレーシアで過ごし、日曜日の深夜便で月曜日の朝に成田に戻るという少し忙しいツアーでしたが、感じたことはたくさんあったので、今回のメルマガはそのことを書きます。

 私と息子を含めて9人で行ったのですが、一番の目的は、当社のマクロ経済セミナーに熱心に参加してくれていた女性が、クアラルンプールへ転勤となり、その方とその方の勤める日本の企業を訪ねることでした。

 彼女は希望してこちらにやってきたとのことでしたが、その積極性にツアーに参加した方たちは感心していました。私ももちろんそう感じたのですが、日本の将来を感じた気もしました。

 彼女の勤める企業は、日本の有力な流通業ですが、やはり日本だけでは成長に限界があるのです。その中で働く彼女も日本でやっているだけではやはり限界と物足りなさを感じたのだと思います。そうした中、日本企業も、そしてそこで働く人たちも、海外での「活路」を見いだそうとしていると私は強く感じました。

 マレーシアは、国土が日本の約9割の広さですが、人口は約2800万人です。首都クアラルンプールは人口が160万人ほど、周辺地域を含めても約600万人の都市で、日本で言えば地方の中核都市クラスの規模ですが、その躍動感には目を見張るものがあります。2009年こそ世界同時不況でマイナス成長となりましたが、2010年の実質成長率は7%を超えており、成長がほとんどない日本と比べるとやはり活気が違います。

 そんな中、日本企業は成長性の高いアジア各国への進出を加速しています。私は講演などでよくお話ししますが、現在の日本の名目GDPは90年代初頭とほぼ同じというか、それ以下の水準です。「失われた20年」です。そして、高齢化や益々膨らむであろう財政赤字、そして政治のリーダーシップのなさを考えれば、このままでは「失われた30年」となってしまう懸念が強い中、企業は、自分たちのベストパフォーマンスを出すべく、海外へとどんどん進出しているのです。

 しかし、この傾向が続くと、国内産業は益々空洞化し、国内での雇用や税収は減少し、さらに成長が鈍化するという悪循環となってしまいます。企業や個人は自分たちではベストの行動をしても、マクロ経済全体ではマイナスとなる、いわば「合成の誤謬」が起こっているのです。

 合成の誤謬が起こっている場合には、政府の関与を必要とします。もちろん、企業の海外進出を止めることはできませんし、そんなことをしたら余計に日本経済はおかしくなります。この際に、政府が行うべきことは、言うまでもなく、国内産業の育成などの積極的な産業政策です。日本が得意とする、精密加工や自動車、航空機・宇宙、アニメ、ゲームソフトなど得意な分野に資源を集中するのです。農業も大規模化すれば、日本の農産物は品質が高いですから、国際的に太刀打ちできます。そのような分野に資源を集中し、積極的に育成することだと思います。そうすれば、そのようなコアになる産業に引っ張られて、他の産業も復活していきます。

 クアラルンプール空港では、格安航空会社のエアアジア用に、大規模な新ターミナルを建設中でした。安いチケットなら日本まで片道3千円です。航空会社だけでなく、大きな地殻変動が起きている世界経済の中で、このままでは日本はどうなっていくのかと懸念を強めています。