オリンピック開催と経済効果

2013.09.10発行 Vol.206
 2020年のオリンピックが東京に決まりました。皆さんもさまざまな思いで、この発表をお聞きになられたと思います。オリンピック決定を受けて、原稿依頼や取材がありましたが、私が聞かれるのは経済効果です。結論から言うと、一部の業種や東京の一部の地域には経済効果はあるかもしれませんが、それほどの期待はできないということです。

 今回のオリンピックでは、施設整備費が約4600億円と言われています。都の試算では3兆円の経済効果があるということです。民間の予測では4兆円強というものもあります。確かに小さい数字ではありません。しかし、たとえば、今年度の公共事業費は5兆円強です。補正予算を入れれば10兆円ほどの予算が執行されつつありますが、それほど景気が浮揚しているわけではありません。

 わが国のGDPは約480兆円ですが、数兆円、それも長年にわたってその予算が執行されるとしたら、経済に与える影響はそれほど大きくないと考えるべきです。

 前回の1964年の東京オリンピックの際にはGDPはわずか30兆円弱でした。私は小学校一年生でした。時あたかも高度経済成長の真っただ中。インフレ率も高かったものの、成長率も10%前後で、社会に活気がみなぎっていたと思います。高齢化率も10%を切っていました。オリンピックのために新幹線や首都高も整備されました。

 翻って、現在では、残念ながら成長の鈍化やそれを何とか支えるための財政赤字の急増もあり、当時に整備されたインフラの劣化が指摘されています。

 そういった意味で、前回と今回の東京オリンピックは経済的背景が全く異なった中でのオリンピックだという認識が必要です。

 そうした中で、オリンピックはコンパクトに行いながら、投入される資金は交通網や競技場のバリアフリー化に使えばいいと思います。高齢化が進展する中、高齢者や身体が不自由な方でも移動がしやすい都市づくりを目指せばよいと考えます。そうすれば、オリンピック後もさらに進む高齢化に対応ができると考えるのです。

 ただ、注意しなければならないこともあります。東京のインフラが整備されれば、それだけ東京一極集中が進みやすいということです。地方の疲弊や震災復興を忘れてはならないのです。

 それだけ、日本は経済的には大きな国になり成熟しているということですが、経済を活性化するには、本物の「成長戦略」が必要です。アベノミクス3本の矢の「成長戦略」第2段がもうすぐ発表になります。第1弾は失望に終わりましたが、オリンピックのように希望を見いだせる内容を期待したいし、オリンピックの高揚感にかまけて成長戦略がなおざりになってはいけないと思います。しっかりとした成長戦略なしに、財政赤字や空洞化、高齢化対応の社会福祉といった大きな課題は解決しないのです。

 いろいろと考えなければならないことはありますが、東京でのオリンピックが決まった以上、私が子供の頃に経験したわくわく感を、今の子供たちにも味わってもらえることを願います。それとともにその子供たちの次の世代にもわくわく感を味あわせてあげられるように、経済の持続的発展を望みたいものです。