オリンパスの上場維持はおかしい

2012.01.24発行 Vol.167
 東京証券取引所は損失の飛ばしを長期間にわたって行い、財務諸表を粉飾していたオリンパスの上場を維持することを決定しました。私はこの決定は、とてもおかしなものだと思っています。

 まず、東証の判断理由は、最大で1235億円の損失を隠していたものの、それが上場廃止基準にあたる「債務超過」にあたらないからとしていますが、オリンパスの2011年3月期の純資産は、決算修正前のもの(つまり粉飾をしているもの)で1668億円しかなく、この粉飾額は非常に大きなものです。

 この粉飾は、有価証券への投資の損失の粉飾であって、本業の営業利益には関わらないからという意見もありますが、そもそも株価はどのように形成されているのでしょうか。PER(株価収益率:株価が「純利益」の何倍かという指標)は投資家にとって株価を判断する大きな材料です。さらに、純利益が源泉となる利益剰余金からしか原則配当を支払うことは出来ませんから、粉飾が行われていた期間に支払われていた配当があるとすれば、それも過大に支払われていたとしか言えず、結論的に、この粉飾が株価形成に大きな影響を与えていたことはいうまでもありません。株価形成の番人であるはずの東証はこの点をどう判断しているのでしょうか。

 さらには、今回の粉飾が全社的ではなかったということも判断材料だったようですが、そもそも「全社的」という定義は何かもはっきりせず、今回のケースでは、財務部門の損失隠しですから、彼らの地位を保全するためにも各部門を巻き込んで粉飾を行うようなことは想定できません。

 オリンパスの財務諸表を見て奇異なのは、2011年3月末で有利子負債が6487億円あるにも関わらず、現預金を2135億円も保有していることです。これはこの会社の売上高の約3ヶ月分にも相当し、経営コンサルタントの経験から言って、通常必要な額の3倍近い数字です。現預金を1千億円ほど減らし、有利子負債を返済すれば、年に20億円ほどの支払利息を削減できるはずです。粉飾が発覚し、銀行融資停止や場合によっては上場廃止が来る日を想定し手元流動性を厚めに保有していたのではないでしょうか。粉飾が組織ぐるみでないにしても、計画的でかつ周到であったと言えると思います。

 東証は株主保護という観点からも今回の決定を下しているようですが、オリンパスの株主を保護して、市場そのものの信頼性を落としたのでは、本当の意味での投資家保護にはならないと考えます。さらにいえば、現在のオリンパスの株主の中には、事件発覚後の短期間の値ざや取りを狙った「投機家」も少なくなく、今回の決定は投機家保護とも言えなくありません。また、粉飾発覚前に株式を保有した投資家は、株主訴訟で旧経営陣や会社を相手取った訴訟を行い、そこから賠償を受けることも可能なわけで、現に訴訟も起こされようとしています。結局は、今回の東証の決定は、投機家や、オリンパスとガバナンスという観点を全く持っていなかったオリンパス旧経営陣を利するだけではないでしょうか。

 東証は、ことの重大性にいても、悪質性においても上場廃止の判断を下すべきだと考えます。東証の上場廃止基準に照らしての判断ということのようですが、判断基準自体が少し狂っているようにも思えます。

 今回のケースでは、監査法人のあり方も考えなければなりません。粉飾に気づかないようでは論外ですし、気づいていたにもかかわらずそれを公表しないのであれば投資家保護という観点からの存在意義はありません。監査法人は現状経営がきびしい状況でどうしても企業側の意向を考慮せざるを得ないことを考えれば、東証が一義的に監査法人を雇い、上場企業に監査に派遣するなどの方策も考えるべきです。

 いずれにしても、今回の事件は、市場や投資家保護という観点の根幹にかかわる問題だと考えます。東証に再考を促したいものです。