アベノミクス3本目の矢と複雑な市場の動き

2013.06.11発行 Vol.200
 アベノミクスの3本目の矢の「成長戦略」が発表されましたが、市場の評価が低く、5月23日以来乱高下を続けている東京の株式市場の反転のきっかけにはなりませんでした。私も、10年後に国民総所得(GDPに海外からの所得を足したもの)を一人当たり150万円増やすという話に対して、具体策に乏しいと感じました。10年後を目指すことは悪いことではありませんが、3年後、5年後と、より近いところでのロードマップと具体策が欲しいものです。

 いずれにしても、昨年末あたりから急ピッチで上げてきた日本の株式市場ですから、少し調整が必要な時期に来ていたことは間違いがありません。自民党政権としては、7月の参院選まで、もう少しゆっくりのペースでも良いから、徐々に株価が上がってくれた方が良かったと思っているかもしれません。一旦、大きく上げて、その後乱高下していますから、元の水準よりは、まだかなり高いものの、期待感がしぼみつつあることは間違いがありません。

 今後の、相場の動きを展望してみましょう。昨年来の株高の直接の原因となったのは、円安が進んだことです。80円を切る水準だった行き過ぎた円高が修正されたことで、輸出企業などの採算が好転するとの期待から、株が買われました。「円安・株高」が進んだわけです。

 それに加えて4月4日に発表されたアベノミクス第2の矢である「異次元の量的緩和」が株式相場の上げを加速しました。2年でマネタリーベース(日銀が創り出すお金)を倍にするというのですから、余ったお金が株式市場などに流れ込むとの期待から一気に相場上昇が加速しました。

 しかし、給与上昇などの経済の実態が伴っていない、しかも急ピッチに上げた相場ですから、現状は調整色を強めていると言えます。

 ニューヨーク市場の株式とドル・円相場の動きは、なかなか複雑な動きをしています。まず、株式市場の動きから説明すると、このところの動きは、「金融緩和を続けるのか止めるのか」ということに大きく反応しています。比較的良い景気指標が出ると、量的緩和を早期に止めるとの憶測から株価が下がり、逆に、悪い指標が出ると緩和を続けるとの期待から株価が上がるという、一見矛盾したようにも思える株価の動きをしています。株価の上げ自体が、金融緩和に支えられているということを表していることでもあります。

 ドル・円相場は少し違った動きをしており、こちらは、米国の景気指標が悪いと、ドルが売られるという状態です。指標が悪いと量的緩和が続くので、米金利が上がらないという期待から、ドルが売られるということです。また、世界の市場が大きく動きリスクが高まると、円が買われるという傾向があります。

 これと東京の株式市場の動きを加えると、さらに動きは複雑になります。量的緩和が続き、ニューヨーク市場での株価が上がれば、日本の株価も上がる要因ともなるのですが、米景気が悪く量的緩和が続くことは米ドル安(=円高)要因ともなるので、こちらは日本では、輸出株を中心に売られる要因ともなります。いずれにしても、当面は、市場は複雑で神経質な動きをすると考えられます。一方、もう少し長い目で見ると、日本の経済も緩やかですが回復の傾向が見え始め、企業業績も、まだら模様ではあるものの、全体的には底上げ感が出ており、そう言った点では、株価はしばらく調整した後、底堅い動きをするのではないかと私は考えています。

 余談ですが、91年に湾岸戦争に勝利したときの父ブッシュ政権の支持率は90%を超えていましたが、翌年の92年の大統領選挙ではクリントン氏に敗れました。国民の支持は移ろいやすく、安倍政権の現状の高い支持率も、一気に失われることもありうるかもしれません。これでアベノミクスが出尽くしということだとそうなりかねません。第3の矢の第二弾に期待したいものです。