やらない理由より、やる方法

2018.12.11発行 Vol.332
多くの人を見てきましたが、成功するためのひとつの大きなポイントは、やらない理由を考えるより、やる理由、やる方法を考えるような思考パターンを持っているかどうかだと思います。
もちろん、危険なこと、リスクの高いことは避けたほうがいいでしょう。松下幸之助さんも「60%」程度の成功確率を、やるかやらないかの基準にされていたようです。この基準も主観的なものですが、とにかく、ある程度やれると思ったら、熱意と努力でそれをやり遂げようとすることが大切です。

やらない大きな原因は「GoodはGreatの敵」ということだと思います。これは『ビジョナリーカンパニー②』(J.C.コリンズ著、日経BP社)という本の冒頭に出てくる私が好きな言葉ですが、そこそこ良い状態になると挑戦をしなくなります。とくに、自分の実力以上の評価や報酬をうけていたり、普段からちやほやされていると挑戦心をなくしてしまうものです。失敗したくないからです。失敗して、恥をかきたくない、今あるものを失うことをしたくないからです。
ときには、失敗することも大切です。本田宗一郎さんは「日本人はとかく失敗を恐れる」と述べておられます。もちろん、大きな失敗は避けたほうがいいですが、小さな失敗は数多くしたほうがいいと私は思っています。なぜなら、ひとつには、それが大きな失敗を避けるための良い教訓となるからです。小さな失敗をすることにより、大きな失敗を事前に察知して避けることができるようになるわけです。
そして、もう一つは、失敗から、成功の種を得ることができるからです。失敗したことを徹底的に分析して、そこから何かを得るのです。「転んでもただ起きない」という姿勢が大切です。逆に言えば、小さな失敗を恐れて挑戦しない人は、そこから得るものもないし、大きな失敗をしてしまうことにもなりかねないということです。

今年は、NHKの朝ドラの「半分、青い。」の経済考証をさせてもらいましたが、そのドラマの打ち上げ会での脚本家の北川悦吏子さんのスピーチが私にはとても印象に残っています。
「半分、青い。」というドラマは、主人公の鈴愛(すずめ)が8歳の時におたふくかぜにかかり、左耳が聞こえないという設定になっています。鈴愛が雨の日に傘をさすと、右側だけが雨が降っているのが聞こえて、左半分は雨が降っていないようなので「半分、青い。」なのです。そして、実は、このことは、北川さん自身が経験したこととのことでした。おとなになってからですが、病気のために彼女自身が左耳の聴力を失ったそうです。でも、彼女のすごいところは、そのときにこれを脚本にしようと考えたことです。普通なら、悲嘆に暮れるでしょうが、自分に起きた不幸を仕事に活かそうとしたのです。
私は、打ち上げ会で彼女のスピーチを聞いて、さすがにプロだなと感心しました。
どんなときにも前向きに挑戦することが大切ですね。


【小宮 一慶】