やってみせ、言ってきかせて、させてみて、誉めてやらねば人は動かじ

2013.06.25発行 Vol.201
 最近、経営実践セミナーでもお話しましたが、今回のメルマガでは、太平洋戦争開戦時の連合艦隊司令長官山本五十六の有名な言葉を取り上げてみたいと思います。この言葉は、リーダーの取るべき姿勢を表していますが、なかなか奥深いものだと私は思っています。

 まず「やってみせ」ですが、これは言うまでもなく「指揮官先頭」を表しています。指揮官先頭は、戦前の海軍のエリートを養成する海軍兵学校で厳しく教えられたことと聞いています。指揮官たるべきもの、常に先頭に立って行動しなければいけないということです。「やってみせ」無しで、「言ってきかせて」からスタートするリーダーも少なくありませんが、それでは、部下は心から動きません。私は、セミナーなどで、リーダーシップとは「覚悟」だというお話をよくしますが、自分が先頭に立って行動する覚悟がない限り、部下は動いてくれません。

 もちろん、すべてのことを上司は自分ひとりですることはできません。しかし、「お客さま第一」など原理原則に関わることは、自分が先頭に立って「行動」しないかぎり、部下はついてこないものです。経営コンサルタントの大先輩である一倉定先生は「評論家社長は会社をつぶす」とおっしゃっていましたが、リーダーは評論家であってはいけないのです。

 「言ってきかせて」もなかなか難しいことです。「〇〇をやれ」とただ命令するのは「言ってきかせる」ことではありません。それをやる「意義」をしっかりと教えることが言ってきかせるということです。自分たちの理念に合っており、そのことをなすことが、どういう意義があるかをきっちりと説明しなければならないのです。リーダーが、自分が先頭に立って行動していても、それが、自分の私利私欲のためならだれもついてきません。動く部下のためになりながらも、お客さまの役に立つ、働く仲間の役に立つ、ひいては、社会の役に立つなどの意義をきちんと説明することが、言ってきかせるということだと私は思っています。

 そして「させてみて」です。部下も評論家にしてはいけません。やらせるのです。やらせることにより、実際に手を動かしてやってみることの難しさや、さらにはやってみることの楽しさや喜びを分からせるのです。評論家のような部下を持つことほど、大変なことはありません。理屈は一人前に言いますが、実行力の伴わない部下です。「やらない理由」をくどくど述べるだけで実績が出ない部下に対しては、とにかくやらせることが大切です。期限を決めてやらせることが、組織全体とともに本人のためにもなるのです。

 そして、最後の「誉めてやらねば」ですが、人は評価を求めます。やったことに対して、評価をすることが大切です。「良いものは良い、悪いものは悪い」ということです。この際に注意が必要なことがあります。「誉める」と「おだてる」は違うということです。両者を混同している人もいますが、誉めるとは、良い結果が出たことや人より努力したことを「すごい」と言うことです。たいしたことのないことや良くないことを「すごい」というのはおだてることで、これでは人は育ちません。仕事を甘く見る上に、上司も甘く見ます。あくまでも、正当な評価を与えることが大切なのです。

 こうして考えると、リーダーの仕事とは、大変なことですが、しかし、人を育てることほどやりがいのあることはないものです。山本五十六の言葉をリーダーは常に心がけたいものです。