なにごとにもあきらめない

2011.12.27発行 Vol.165
 今月、津波や原発で大きな被害を受けた南相馬へ講演に行きました。地元の中小企業の方たちから私の話を聞きたいとのご依頼があり、行ってきたのです。常磐線が、南は原発の影響で、北は津波被害により不通となっているため、福島駅まで新幹線で行き、そこで講演依頼者の方に迎えていただき、車で1時間半ほどかけて南相馬に行きました。

 福島市内も放射線量の高い地域があり、子供さんがいる家庭の中には、県外に引っ越している方も少なくないとの説明を受けながら、車は南相馬へ向かって走っていきました。
 南相馬市自体の線量はそれほど高くありませんが、市の一部が福島第一原発から20キロ圏内となるために、その地域の方たちは避難しています。震災前には7万人以上いた南相馬市の人口は、震災直後には1万程度にまで減少し、今でも4万人強とのことです。

 南相馬で、講演前に中小企業の経営者の方たちとお話をする機会がありましたが、多くの方が心配しておられたのは、ビジネスそのもののこともありますが、地域コミュニティが崩壊してしまうのではないかということです。線量がそれほど高くないにも関わらず、やはり、小さな子供さんのいる家庭では、この地域を離れる人たちも少なくなく、また、現在南相馬市を離れている人たちが本当に戻ってきてくれるのかという心配もあります。

 一方、原発で避難している人たちには一人当たり月10万円の補償が支払われているそうですが、その人たちの中には、残念ながら働く意欲をなくしている人たちもいるということでした。南相馬市のパチンコ屋さんはかなり繁盛しているという話も聞かされました。一部の人たちには、就業支援や心の支援も必要になっているとのことです。

 しかし、こうした状況にも関わらず、私がお会いした経営者たちは前向きでした。厳しい状況の中で、いかにビジネスを成り立たせていくか、地域コミュニティをどのようにして維持していくかを必死で考えておられました。私も講演で、こういう厳しい時期だからこそ、「方向づけ、資源の最適配分、人を動かす」の経営の本質をしっかりと考えて、「お客さま第一」の原則を守ってほしいというお話をしました。

 また、南相馬市に入るあたりに、私の人生の師匠の藤本幸邦先生の「はきものをそろえる」の看板が、地元の有志の方たちにより立てられており、先生とのご縁も感じられたので、「お金を追うな、仕事を追え」などの先生の考え方のお話もしました。

 どんな状況でも、あきらめないということが大切です。できないことよりできることは何か、持っていないものへの不満より、持っているものへの感謝の気持ちが大切です。

 地震や津波で被害を受けられた地域は復興に長い時間を必要とするでしょう。原発の被害を受けている地域は、場所によってはさらに長い10年単位の年月をかけないと復興は無理かもしれません。しかし、私たちは、あきらめることなく復興に全力をかたむけている人たちのことを決して忘れてはいけないと思います。

 南相馬からの帰りに、夕暮れの中を飯館村を通りました。全村避難地域ですが、わずかながら灯りの見える家がありました。避難されずに暮らしておられるそうです。しかし、飯館村全体は、暗闇に沈んだようでした。今年は、日本にとって本当に大変な年でしたが、被災された方々の暮らしが早く元に戻ることをお祈りするとともに、私たちもそのことをいつも心に刻んでおくことが大切で、いかなるときにも前向きに考えることだと思います。

 今年も皆さんには大変お世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。