おめでとうのなかった入社式

2011.04.04発行 Vol.0
 毎年4月1日には、非常勤の役員を長くさせていただいている会社の入社式に毎年出席します。その会社には、ずいぶん前、まだその会社が現在の20分の1程度の規模のときに勤めていたこともあるので、会社が発展し、多くの優秀な新入社員さんが入社されるのを見ることができるのを毎年楽しみにしています。

 しかし、今年の入社式は少し雰囲気が違っていました。37名の方を迎えての入社式でしたが、「おめでとう」の言葉がなかったのです。それにはもちろん理由があります。その会社では東北地方の拠点のうち6カ所が使えなくなるほどの被害を受け、1か所は完全に流出、亡くなった方、行方不明の方もいらっしゃる中での入社式だったからです。東北地方から参加した新入社員たちは、前日に役員が車で迎えに行った状況でした。業績にはそれほど大きな影響がないものの、やはり仲間や拠点を失った悲しみは想像以上のものがあり、とても「おめでとう」とは言いづらい状況だったのです。トップはじめ経営幹部は、おめでとうの代わりに「入社していただき有難う」と新入社員たちに声をかけていました。

 私は、毎年、入社式の後に、新入社員さんたちに1時間半の講演をさせていただくのですが、その冒頭で、あえて「おめでとう」ということを言いました。4つの意味でです。

 ひとつは、皆さんもご承知のように、今年の新人さんたちは、就職氷河期よりも厳しい、非常につらい就職戦線を勝ち抜いた人たちです。そのことにまずおめでとうと言いました。

 二つ目は、彼らは非常に良い会社に入社できたことです。この会社は先にも書いたように、以前私が勤めていたことやその後も長く役員としてお付き合いをさせていただいていますが、経営姿勢も業績も良い会社です。また、非常に立派な経営者をいただくという点でも、大変良い会社なのです。経営コンサルタントの私にとっては、お客さまである企業は私にとってプライドの源泉ですが、とくに、この会社は、私の会社同様、私にとっては最大のプライドの源泉なのです。その会社に彼らが入社できたことは、彼らにとって非常にラッキーだと思ったのです。

 三つ目は、厳しい時期に彼らが入社したことに対してです。この会社にとっても、日本にとっても非常時です。こういう時期に入社した経験は、必ずかれらの将来に役に立つと私は確信しています。

 そして、最後は、この会社や日本の国に対して、おめでとうと言いたかったのです。こういう大変な時期に素晴らしい新入社員を迎えることができたことは、この会社にとってこの上もない喜びです。また、この困難な時期に、新たに社会人となり、この会社だけでなく、この国日本を支える仲間入りをしてくれたことは、日本にとっても大変有難いことだと言えます。彼らは、この会社、そしてこの国日本にとっての希望であり、夢なのです。

 この後、講演では社会人として、正しい考え方とは何かということをお話しました。少しでも彼らの将来に役立てば私にとってこれ以上の喜びはないと思っています。

 今年社会人となった多くの人たちに幸多かれとお祈りするとともに、この国日本が早く立ち直ることを願ってやみません。