「黒田ショック」の行く末はいかに

2013.04.09発行 Vol.196
 昨日、大阪でテレビ(毎日放送「ちちんぷいぷい」)に出たときに、黒田日銀総裁の打ち出した「大胆な金融緩和」についてコメントを求められました。ちょうど、その少し前に「朝ご飯とメタボ」の関係についての話題が出ていたので、私は、今回の金融緩和について、「これまで20年間以上、ずっと成績が振るわなかった学生に、今日からごはんを2倍食べなさい。そうすれば成績が上がるから」と言っているようなものだと説明しました。  結論から言うと、ごはんを2倍食べることで、ひょっとしたらその刺激で学生は勉強ができるようになるかもしれませんし、あるいは、単にメタボ街道まっしぐらということになるかもしれないということです。ごはんを2倍食べて、やる気になって、これまでとは違ったペースや質で勉強をやれば成績は上がるでしょうが、勉強のやり方を変えずに今まで通りだと、体重が増えてメタボになってしまうだけです。

 金融緩和だけでは、バブルは起こるかもしれませんが、経済は成長しません。株価が一時的に良くなることはあっても、しょせん、それは実力でないミニバブルでしかありません。しかし、企業が設備投資を行い、政府が本気になって規制緩和などで国内産業を育成するための大胆な政策を行えば、経済が巡航スピードを速める可能性はあります。

 そのためには、まずは企業の動向に注意しなければなりません。少し専門的になりますが、今回、日銀が大きく増加させようとしているのは「マネタリーベース」と言われるものです。これは「日銀券」と「日銀当座預金」の合計で、日銀が直接コントロールできる資金量です。「中央銀行通貨」と呼ばれることもあります。今回は、銀行などが持つ国債を買い取ることにより、金融機関が日銀に保有する当座預金(日銀当座預金)にその代り金を入金することにより、日銀当座預金の残高が増えるという構図です。

 大切なのは、それがきっかけとなり「マネーサプライ」が増加することです。マネーサプライというのは、日銀券と「民間の金融機関の預金」の合計です。現在では「M3」と呼ばれています。企業が前向きに活動し、資金需要が増え、お金を借りるようになると、借入金は企業が持つ預金口座に振り込まれます。つまり、資金需要が増えると預金残高(マネーサプライ=M3)が増加するのです。(ここでは、話が複雑になるので「信用創造」の話はしませんが、銀行貸出しが増えると乗数的に預金残高が増えていきます。)

 いずれにしても、マネタリーベースを増やす(ご飯を食べる量を増やす)だけでは、きっかけにはなるかもしれませんが、それだけでは経済が本格的には良くなりません。企業が設備投資を増やすことなどが必要です。そのためには、アベノミクスの3本目の矢である「成長戦略」がとても大切です。6月に発表される予定ですが、従来と変わらない内容なら、急速に期待がしぼむ可能性もあります。財政赤字を穴埋めするための国債の大量増発も続きます。それを日銀が実質的に引き受ける構図になっていることにも注意が必要です。

 いずれにしても、今回の「黒田ショック」がミニバブルで終わるか、それとも本格的成長のきっかけとなるかは、今後の政府や企業の動向にかかっていますので、注目していきたいところです。