リーダーの発言・・・大欲は無欲に似たり

2013.05.28発行 Vol.199
 このところの橋下大阪市長の発言が物議をかもしていることは、皆さんもご存じのことと思います。主義主張はあると思いますが、女性蔑視とも受け止められかねない発言や日米関係に悪い影響を及ぼす可能性のある発言は、政治のリーダーとして論外だと思います。訂正や謝罪、あるいは、一部の発言については弁明を行っていますが、本人だけでなく、自分の所属する組織などの信頼をも失いかねないものです。

 私のお客さまには、企業経営者などのリーダーが多いのですが、発言には、自分の立場を踏まえて注意をしなければならないと思います。言って良いことと悪いことがあるということです。

 「本音」を話すリーダーが好かれるという意見もあります。もちろん、その通りです。私は、コミュニケーションが成り立つには「意味」と「意識」の双方が伝わることが大切だと考えていますが、本音を語らないリーダーは、やはり意識の共有がしにくく、部下や周りの人からの信頼が得にくく、コミュニケーションが本当の意味では成り立たず、部下の心もつかみにくいと思います。

 ただ、本音が重要だからといって、何でも思ったことを話せば良いというのとは別のことです。話をする場合には、相手の立場や気持ちをも考慮しなければならないのは言うまでもありません。もちろん、政治家のように一般大衆の大勢の人を相手に発言する場合には、すべての人が納得することを話すのはとても難しいことです。しかし、だからと言って、一部の人の人権や人格を否定するような発言は許されることではないことも明らかです。リーダーとして人の上に立つ立場にある人は、自分の発言がどういう人に対して、どういうインパクトを持つかを考えなければなりません。

 もちろん、どうしても主張しなければならないことがあるのも事実です。私の場合なら、関わる企業や人が幸せになるには、原理原則があると考えており、その部分は譲らない覚悟でいますが、それでも、それを講演で話したり本に書くときには、細心の注意を払っています。私の考えと違う考えをもっている人がいることも知っているからです。私としては、それが最も適切だと思って信念として話していますが、他の主張もあることは認識しているからです。

 政治の世界であれ、会社経営であれ、リーダーが思ったことを主張して、それにより社会や会社を変えたいという気持ちは分かります。しかし、そうであるからこそ、発言には注意しなければならないのです。高い志があればあるほど、何をしても良いというものではなく、そうであるからこそ、不要の抵抗を避け、本当の志を成し遂げる努力をしなければなりません。それでこそリーダーです。

 「大欲は無欲に似たり」という言葉がありますが、大きな欲があればあるほど、その志を遂げるために、小さなことにはとらわれず、無用の抵抗を避けなければならないのです。志が高いほど、抵抗が大きいこともありますが、不用意な発言で無用の抵抗を生む必要もないのです。いずれにしても、私も含めて、志を遂げるためにも、発言には注意したいものですね。